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第1部 一章【財前姉妹】その7 第十話 延命ポン

Author: 彼方
last update Last Updated: 2025-05-11 10:00:00

86.

第十話 延命ポン

 昨年度よりプロ麻雀師団はルール変更を行い、今までは採用していなかった持ち点ゼロを割ったら終了というルールをリーグ戦で採用することになった。これを通称『飛び終了』と言いフリー雀荘なら100%採用しているルールである。そのほかにも2人同時にアガリになった場合のルール『ダブロン』も採用した。

 どうやら競技者(プロ)たちもフリー雀荘に沿ったルールにしておくべきであるという結論になったようだ。フリー雀荘と似通ったルールでやってこそ『プロは強いな』という話になるのだから。特殊なルールのサークルでてっぺん取ってもしょうがないのだ。

 それに、飛び終了ルールは麻雀に戦術の深さを与えてくれる。つまり、見逃しや直撃狙いという条件作りだ。これを上手く計算して勝ち切る人こそが本物の強者だと言える。

 そんなわけで、飛び終了のルールがある四回戦。ミサトはメグミの東場の猛連荘で飛ばされる寸前まで追い詰められていた。

南2局一本場15巡目にミサトはこの手。

ミサト手牌

二三四③④22666(777)

200点持ち ドラ二

 ミサトは断ラスで現在は北家。2000点テンパイ中だ。

 トップ目は上家のメグミでなんと72300点!

 メグミは数巡前からテンパイ気配。打点は分からないが大ピンチではある。

 場にはソーズが多く切られており2索で待てるテンパイが組めたら強いと思って作っていたがそうもいかなかった。

 ここに対面から2索が切られる。

「ポン!」

 そう! これは絶対にポンして打6だ。上家(メグミ)のツモ番をこの一瞬だけでも遅くするべきだからだ。

 都合の良いことにソーズは全員に安全性の高い場面なので刻子と対子を切り替えるのに何のリスクもない。

 ほんの一瞬の、でも確実に生き長らえるための―― 延命ポン。

&

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